マーケティング4.0 認知から推奨に進ませるOゾーンとは?

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これまで述べてきた通り、マーケティング4.0の究極の目標は、顧客を認知から推奨に進ませることです。ここでは、マーケターがその目標のために理解しておく必要があるOゾーンについて考えていきたいと思います。Oゾーンとは、顧客が特定の商品を知ってから購買に至るまでに影響を受ける源のことを表しており、マーケティング活動を最適化するのに有用なツールとして利用できます。それでは、Oゾーンの概念の詳細をみていきましょう。

Oゾーンとは? Outer、Others’、Ownの3つの「O」

Oゾーン(オーゾーン)は、5A全体を通して顧客が影響を受ける、3つの主要な情報源をまとめたものです。外的(outer)影響、他者の(others’)影響、自分自身の(own)影響です。これらの源は、顧客に対して単独で影響を及ぼすわけではなく、常に絡まり合って組み合わさり、顧客の決定を左右します。企業やブランドは顧客の決定をより望ましいものに近づけるために、これらをうまく識別したうえで利用するとよいでしょう。

『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極の法則』の図を参考に作成

Outer 外的影響とは?

広告や販売員のサービスなどの外部から受ける影響のことで、ブランドにとっては、Oゾーンのうち唯一直接制御できる可能性のあるものです。自社ブランドから発信するメッセージや広告の媒体や内容・頻度は管理できますし、顧客接点の強化や設計もコントロールできるといえます。以前の記事で紹介したような、スマホアプリを使ったブランド戦略も、外的影響に含まれます。ただし、その結果として顧客がどのような印象を抱くかという点では制御できません。企業から発信されたメッセージを好意的に受け取り、その後の決定に進ませられるかどうかは、与えられた経験がどれくらい満足のいくものであるかによって異なります。

デジタル時代に顧客エンゲージメントを獲得するには

Others’ 他者の影響とは?

同様に外部環境に由来し、友人や家族など身近な人々によるクチコミや、SNS上の会話、クチコミサイトの情報などから受ける影響を示します。自身が何らかの商品の購入を検討しはじめたときに、購入経験者が周りにいない場合は、まずはクチクミサイトを確認するという行動はいまや当たり前になっています。一般的に他者への影響力が大きいとされているのは若者・女性・ネティズン(YWN)で、彼らによる影響は往々にして、購買の大きな推進力になります。他者の影響は、外的影響とは異なりブランドの管理・コントロール下に置くのは難しいです。

購入者が自分の意見を発信するかどうかは、評価の善し悪しにかかわらず、購入者が自由に判断して行動します。唯一、ブランドが実施できることは、コミュニティ・マーケティングを活用し顧客同士のカンバセーションが生み出される場所を提供することです。カンバセーションの内容を直接制御することはできませんが、忠実な顧客の助けを得ることはできるかもしれません。

デジタル時代に影響力を持つ3つのセグメントはなにか?

Own 自分自身の影響とは? 

他方、自分の内側に由来して自らの経験や評価、個人的選好が源となるのが自分自身の影響です。個人的選好は、既にクチコミや広告によってバイアスをかけられていることが多く、ここで示した3つの影響は常に組み合わさって作用しています。たいてい、顧客に最初に到達するのは外的影響で、他者の影響がそれに続きます。最後に、これら2つの影響が互いに作用しあって、顧客自身の影響を形づくるパターンが多くなります。

普段、何気なく行われている決定のひとつひとつは、いくつもの影響やクチコミを通じて自分自身の経験として積み重ねられ、個人の嗜好を形成していくのです。

『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極の法則』の図を参考に作成

顧客は、他者の影響をますます重視するようになっている

どんな顧客も通常、これら3種類の影響のすべてに左右されますが、その割合は人によって異なり、個人的選好が強く、広告や友人の推奨にはあまり影響されない顧客もいれば、他者の推奨に大きく影響される顧客や、広告を信用する顧客もいます。

細かく見れば個々人の差は出てきますが、今日の顧客は、自身の影響や外的影響よりも、他者の影響に最も大きく左右されるようになっています。顧客が最初に到達する外的影響である広告などの企業からの発信は、昨今、顧客が絶対の信頼をおく要素ではなくなっています。自身の閲覧履歴をもとにカスタマイズされた広告は、好ましくないと思う顧客が多いというデータもあります。また、以前はブランドに対する態度を決めていたのは顧客個人でしたが、現在では、顧客を取り巻くコミュニティの影響を大きく受け、個人的に見える多くの決定は、事実上社会的な決定と捉えられます。結果として、多くの顧客がもっとも注意を払うのは、オンライン上に投稿された他者の意見となっているのです。

コトラーのマーケティング4.0の接続性の時代とは?

5Aで顧客が最も影響を受けやすい段階は、調査と行動

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調査段階の顧客は、他者に積極的にアドバイスを求め、たくさんの外部情報を吸収しようとします。そのため企業やブランドにとっては、調査段階にマーケティング施策を組み入れることで、好感度を上げるチャンスを得ます。

例を挙げると、調査段階で有用となってきているのが、コンテンツマーケティングです。顧客が製品について調べるときには、検索エンジンを利用します。顧客の検索意図を理解し、それにあったコンテンツを提供することで、顧客の調査を手助けし、自社にとって有利な情報を提供することが可能です。具体的な例としては、自社によるFAQコンテンツ、ブロガーによるレビュー、Amazonのユーザーレビューなどがあげられるでしょう。

さらに、行動段階では、顧客は実際に消費したり使用したりする過程で、より強力な顧客体験を提供してくれるブランドを、ますます好きになっていきます。もちろん、アフターサービスやイベントなどを通じた顧客体験からも、顧客は多大な影響を受けます。一瞬の体験であっても、深い感動を与えられるようなブランドがロイヤルティを獲得するのです。

消費・使用段階では、製品の使い心地や使用によって得られる満足度の高い体験がそれにあたります。昨今ではネット通販利用が多くなってきており、箱を開けたときに入っているショップからのメッセージカード、サプライズ要素のあるオマケなども、顧客体験を高めるツールとなっています。

5Aを進ませるためには、顧客のOゾーンを正しく理解する

全体としては、他社の影響が重視されていることは確かですが、企業やブランドは自社の顧客を正しく理解し、特に力を入れるべき活動を決める必要があります。外的影響が他の2つより重要な場合には、広告や他のマーケティング・コミュニケーション活動に力を入れればよく、他者の影響が最も重要な場合には、コミュニティ・マーケティング活動に注力するとよいといえます。そして自身の影響が最も重要な場合には、購買後の顧客体験を高めることに、より力を入れるべきといえます。

3つの影響力を識別し、自社のマーケティング活動を最適化することを目指しましょう。

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