企業の社会的責任、社会的役割が常に求められるようになった現代では、企業はビジネスモデルを見直していくことが必要です。グローバル共通の目標としても「SDGs」の17項目のゴールが掲げられており、世界で起きているさまざまな環境問題に対して積極的な取り組むことは、企業自身にとってもメリットがあります。たとえば顧客や取引先からの信頼を得やすく、企業価値が向上することが期待できます。
企業が持続的に発展し続けるためには、人びとのライフスタイルや価値観そのものに働きかける変化の創出が欠かせません。今回の記事では環境の持続可能性というテーマについて、企業としてどのように取り組むべきか考えていきたいと思います。
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環境問題の解決に向け、企業が担う3つの役割とは?
環境に対する大きなインパクトを生み出すために、企業が果たすべき役割を以下に3つ紹介します。
①イノベーター
環境にやさしい製品や、環境を救う製品を生み出します。イノベーションはグローバルに長期的な形で利用されるので大きなインパクトをもたらしますが、長期の開発にはリスクが伴い、資金も必要です。そのため、持続可能な製品のイノベーションを行うことが企業の存在理由の中核(ミッション)でなければなりません。
持続可能性をビジネスモデルの核心に組み込んでいるデュポンは、イノベーターの好例です。同社は環境問題を緩和するとともに、地球にさらなる害が与えられるのを防ぐ製品を生み出すというミッションを、社員ひとりひとりのマインドに根づかせて推進しています。
②投資家
イノベーターによる研究プロジェクトに資金を提供します。投資家にとってグリーンビジネスは中核的ミッションではありませんが、グリーンで持続可能な世界を築こうというビジョンは共有しています。資金を出すことで間接的に大きな貢献をするのです。
ウォルマートは、かつて環境問題に無関心な企業でしたが、環境にやさしい製品・プロセスの採用によりビジネスモデルを刷新した結果、社会的責任に対する姿勢が評価され、評判が大きく改善しました。ウォルマートのような世界最大級の企業の変化は、社会的な変化につながるため大きなインパクトをもたらします。
③普及者
相対的に小規模な企業で、環境に配慮したビジネスモデルにより差別化と競争優位を実現します。地球を守るというバリューを社員や顧客に広め、推奨を生み出すことがミッションです。推奨はクリティカル・マス(普及率が一気にはね上がる分岐点となる水準)を形成し、より多くの人びとへの波及効果を生み出します。
例えばティンバーランドは、自社製品の環境へのインパクトを伝えることで顧客の関心をかきたて、彼らを環境保護活動に参加させています。また、さまざまなプログラムを通じて世界中で自社のバリューを推進しながら、コミュニティへの支援も行っています。
イノベーター、投資家、普及者の協働で大きなインパクトの創出する
重要なのは上記の3つの企業の役割すべてが、市場で機能し協働してはじめて、インパクトのある相乗効果を生み出せるという点です。普及者がニッチ市場にバズを生み出し、このバズを起点に投資家が世論を高め、グリーン製品を主流市場まで到達させます。もちろんイノベーターがいなければ革新的な製品の供給が得られないため、イノベーターは不可欠です。
具体的なコミュニティをターゲットにした、環境に配慮した商品やサービスを提供するグリーン・マーケティングを例に見ていきましょう。この市場では以下の4つの顧客セグメントに細分化できます。企業は各顧客セグメントの考え方や行動を理解したうえで、それぞれに適切なマーケティングを行うことが重要です。
①トレンドセッター:トレンドを決める先駆者市場の人びと
グリーン製品の導入段階において最も重要なセグメントです。彼らは最初の顧客であり、インフルエンサーです。グリーンであることを訴え、製品の推奨者になってもらいましょう。
②バリューシーカー:価値を求める主流市場の人びと
柔軟性はありますが合理的です。グリーンだからという理由で割増価格を払う気はなく、コスト効率がよくなければ納得しません。自社製品が環境に負荷をかけずに大きな価値を提供する点を強く訴えましょう。
③スタンダード・マッチャー:標準に合わせる主流市場の人びと
保守的で、業界標準になっていない製品を購入しません。彼らに選ばれるためにはクリティカル・マスに達している必要があります。
④コーシャス・バイヤー:トレンドに乗り遅れる慎重な人びと
極めて懐疑的で、既に常識になっていてもグリーン製品を買わない顧客です。
そのほか製品ライフサイクルのプロセスとして、まず導入段階ではグリーンであることを重要な差別化要因として使い、推奨を求めます。次に大きな評判を生み出して成長段階に到達させるためにはクチコミ・マーケティングを利用するとよいでしょう。成長段階ではエコ効率を訴えながら人気を広めていきます。さらに、成熟段階に達すると競争が激化するため、グリーンであること以外の差別化要因を見つけることも重要です。
企業は自社のビジネスを考慮してどの役割を果たすことができるか検討し、他の企業とも協働して、グリーン・マーケティングの強化を目指しましょう。変化を推進するためには、環境の持続可能性を自社のバリューに組み込むことが重要です。最終的には、コストの低減、信用の向上や社員のモチベーションの向上などの便益がもたらされ、顧客に選ばれるための企業価値の向上につながります。