顧客ロイヤルティを獲得する3つの戦略 第2回ブランド戦略(全3回)

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マーケティングの環境がめまぐるしく変わっていることはみなさんもご存知の通りです。未来の予想がしにくいVUCA時代と言われて久しいですが、コロナ禍の影響もあってさらに持続的成長の実現が大変見通しにくくなっています。これまで人類が経験したことのないこの状況に対して、企業はどのように対応していくべきか、3つの観点からシリーズで説明していきたいと思います。
第2回は「ブランド戦略」です。

2022年10月、世界のアカデミアと実務家が集まる「ワールド マーケティング フォーラム2022」がインドネシアのバリ島・ウブドで開催されました。発起人のフィリップ・コトラー教授は講演の中で「Entrepreneurial Marketing」つまり起業家精神をもったマーケティングの重要性を説きました。コトラー教授以外にも、多くのマーケターがCOVID-19流行後の経済の回復にあたり、この起業家精神の重要性を提唱しています。「Entrepreneur」というと事業をおこす経営者を想像するかもしれませんが、国連の定義では「市場に変化と成長を起こすような新しい価値を創出し、普及を促す人々。機会をとらえて大胆にリスクを取る人」とされています。つまり起業家精神を持つことは、新しい企業をおこすことだけでなく、既存の企業の中でも可能ということです。

コトラー氏の講演を元に弊社にて解釈

ワールドマーケティングフォーラム2022

この起業家精神は実際のマーケティングにどのように取り入れればよいのでしょう。通常、我々の行うマーケティング活動はブランドを中心として行われていきます。ブランド戦略はいつの時代もマーケティングの中心的な課題です。なぜなら、企業にとってもっとも重要なロイヤルティをつくりあげていく対象はブランドに他ならないからです。ブランド・ロイヤルティを高めることで他の競合商品との差別化を実現し、新市場の創造を図るという意味では、ブランド論も明確に起業家的マーケティングの一部に属するのです。

それでは新市場の創造を図るため、ブランド・ロイヤルティはどのように高める必要があるでしょうか。ブランドとは、単なる商品を区別する記号ではなく、人間と同じように生き生きと個性を持っているものです。とくに今日のブランドは、企業から与えられるものではなく生活者の中にあるもので、ブランドを保有している企業でさえも勝手に壊せないことは、多くの例でよく知られています。今日では、マス媒体を中心としたメディアミックスではなく、購入のはるか前から始まり、消費のはるか後まで続いていく顧客体験=CXによってブランドはつくられていきます。インターネットやSNSが現代ほど発展する以前では、ブランドによってもたらされる価値は企業から「提供」されるものでしたが、いまでは企業は顧客とともに価値をつくりあげていく、「共創」が求められています。

多くのCX接点での共創、顧客の経験価値がブランドパーソナリティとなります。企業は顧客とともにブランドの顔をつくる過程で、一貫したパーソナリティ・人格を持つブランドを見せていく必要がありますが、やってはいけないことがあります。それは時々によって矛盾する顔を見せていくこと・嘘をつくことです。矛盾する顔を持っているということは、人間でいえば嘘をつく人、二面性がある人というネガティブな印象がありますね。顧客は膨大な情報網を持ちますから、企業の矛盾や嘘をすぐに見抜きます。そして再び信頼を得るのは長い時間がかかり、もちろん共創もむずかしくなります。

起業家的精神を持ち、新しい価値を強く印象付けるためには企業が顧客との共創を積極的に推し進め、つくりあげたブランドの人格を生活者の中に落とし込んでいく必要があります。新たなCXによってこれまでの顧客行動に変化が生じても、ブランド戦略はマーケティングの中心的な概念にほかなりません。ロイヤルティを高めて多くの人に愛してもらえるようなブランドパーソナリティを共創し、新しい価値を創造しましょう。


顧客ロイヤルティを獲得する3つの戦略 第1回 市場戦略
顧客ロイヤルティを獲得する3つの戦略 第3回 顧客戦略

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