『コトラーのマーケティングX.0』の最新書(英語版)が2021年2月に発売されました。
トランスコスモスでは、本書の共著者であるヘルマワン・カルタジャヤ氏のWebセミナーを2020年7月に開催。新しい時代のマーケティング戦略として、「CI-EL(シエル)」というコンセプトについて語っていただきました。
第2回では、「マーケティング5.0を実現するための人間性・クリエイティビティ」についてご紹介します。
クリエイティブとはなにか
クリエイティビティとはなんでしょうか。クリエイティビティは発散思考と収束思考を併せ持っています。マークプラス社ではCI-ELを発展させるためのチームがありますが、ジェネレーションYやジェネレーションZの若い世代の社員を入れています。拡散と収束を繰り返しながら答えにたどり着く必要があるため、新しい感覚の持ち主を加入させることは重要です。
緑色の「発散」(ダイバージェント)のところをご覧ください。発散思考を持つためには、探求(EXPLORATION)と想像(IMAGINATION)を繰り返すことです。CI-ELにはこの探求心と想像力が必要です。この考えはブルーオーシャン戦略のチャン・キム教授の考え方に着想を得ました。
このプロセスはRAREという頭文字で表されますが、向上(Raise)、追加(Add)、減少(Reduce)、削除(Eliminate)の組み合わせで行われていきます。これは『リーンスタートアップ』のエリック・リース氏の考え方にも影響を受けています。
これらは何を意味するのでしょうか。アッハモーメントです。アッハモーメントとは、日本語ではアハ体験と訳されますが、ドイツの心理学者カール・ビューラーが提唱した心理学の概念で、人が未知の物事に関する知覚関係を瞬間的に認識することを言います。簡単に言うと、電球のようなひらめきです。
クリエイティブなアイデアの実現のためのステップ
探求と想像ののちにアハ体験を得て、収束思考をする段階にはいるのです。アハ体験を得たクリエイティブなアイデアにすべて対応するわけではありません。そのアイデアが自社にとってよいものかを精査していきます。
クリエイターはアーティストです。多くのアイデアが存在しますが、アーティストというのは自分たちがアイデアを生み出すことができればよく、解決法は気にしません。絵を描きはじめ、彫刻をはじめ、音楽を作曲しはじめますが、それは何かを解決するものではないのです。
しかし、アーティストが同時にイノベーター要素を持ち合わせているのであれば、彼らはクリエイティブなアイデアについて検証作業を行えるでしょう。
図の下段にある探求、想像、優先、検証を通じ、どのアイデアがビジネスになるかを検証していきます。探求段階では学習・分析をし、想像段階では結合・統合し、優先度決定の段階では評価・マッピングをしていきます。そして最終的に検証段階でテストを行い、イエスかノーかを決定していきます。イエスなら進めます。ノーなら止めます。
図の中段の科学・テクノロジー、政治・法的、経済・ビジネス、社会・文化、産業・市場はマーケティング側面です。いかなるアイデアもこれらの5つに影響を受けるでしょう。我々はこれを「5つのドライバー」と呼びますが、これらのマーケティング側面によりあらたな産業が急成長したり、成長を阻害されるなどの影響を受けるのです。
現在はコロナ禍にあります。社会的文化的な変化、経済危機の発生、ビジネス活動の停止など大きな変化が訪れました。各国政府はさまざまな対策を取らねばなりません。政治的・法的な側面です。我々はこのように日々刻々と変わり行く状況の中で、どのような機会があるのか見極めようとします。マーケティング側面の変化により、新たなニーズが生まれ、新たな市場が想像されるでしょう。
図の上段をご覧ください。これらの活動はすべて資本を増やすことにつながる必要があります。クリエイティブなアイデアにより、さらに生産的になる必要があります。オムニハウスが構築され、オムニヒューマンがいるのなら、クリエイティブなアイデアの創出のため、発散思考・収束思考を行い、新たな価値、新たな市場を想像していきましょう。より生産性を高めていくには創造的になるっていくことが重要なのです。
CI-EL 第3回では「マーケティング5.0を実現するためのリーダーシップ」について実例を上げて紹介していきます。
ヘルマワン・カルタジャヤ|Hermawan Kartajaya
MarkPlus 創業者兼CEO
インドネシアを中心に、アジアで経営コンサルティングを行っているマークプラスの創業者。アジア・マーケティング連盟名誉フェロー。英国マーケティング研究所から「マーケティングの未来を形づくった50人のリーダー」の一人として紹介されている。『ASEANマーケティング:成功企業の地域戦略とグローバル価値創造』(マグロウヒル・エデュケーション)、『コトラーのマーケティング4.0:スマートフォン時代の究極法則』(朝日新聞出版,P・コトラー、イワン・セティアワンと共著)など共著多数。
- 新コンセプトCI-EL 第1回 CI-ELとオムニハウスとは
- 新コンセプトCI-EL 第2回 クリエイティビティとはなにか 本記事
- 新コンセプトCI-EL 第3回 クリエイティブとイノベーティブの事例紹介
- 新コンセプトCI-EL 第4回 起業家とリーダーの事例紹介
- 新コンセプトCI-EL 第5回 マーケティング5.0時代のリーダーシップ