テクノロジーの進歩は世界を大きく変えています。スマートフォンやIoTが一般化したことで顧客のオンライン上のデータが収集可能になり、さまざまな製品やサービスがパーソナライズされるようになっています。マーケティングの世界も例外ではありません。顧客をひとかたまりとして一方的に行うマーケティングは受け入れられなくなり、One to Oneのアプローチが求められるようになっています。顧客一人ひとりに行うマーケティングは「セグメントオブワンマーケティング」と表現されます。今回はセグメントオブワンマーケティングの考え方について理解を深めていきます。
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セグメントオブワンマーケティングとは
セグメントオブワンは日本語にすると、かたまりの中のひとり。1980年代のアメリカで提唱された考え方で、市場のセグメンテーションを進めていくと、最終的に行き着くのは顧客ひとりで構成される個人のセグメントであるとする概念です。
セグメントオブワンマーケティングはこうした考え方のもと、顧客一人ひとりへの最適なアプローチを目指します。特に、製品やサービス単体ではなく、購入に至る前の段階から実際の購入、さらにはアフターサービスなどを通じて顧客体験の最大化を図ろうとする考え方です。
セグメントオブワンマーケティングの重要性
TVCMなどがマーケティングの主流であった時代は、顧客の行動や趣味嗜好などが画一的であったため、マスマーケティングからトレンドやブームを巻き起こすことができました。
しかし顧客ニーズが多様化した現代では、マスマーケティングだけでは効果的な訴求を実現できません。いかにターゲットとする顧客を絞り込み、彼らを惹きつけるアプローチを行えるかが重要になります。
そのためには顧客を理解しなければなりません。情報の多くは人間の感情から生まれているからです。顧客がなぜその行動をとるのか、その商品を選ぶのかといった文脈からストーリーを描く必要があり、これを突き詰めていくと究極は、顧客を個人として捉えるセグメントオブワンマーケティングに行き着くわけです。こうした流れは「顧客主義」から「個客主義」へのシフトと表現されることもあります。
これからのマーケティングで求められるのは、顧客一人ひとりに対する理解を深め、個別のコミュニケーションやアプローチを行うこと。そしてその過程で関係値を高め、顧客ロイヤリティや生涯価値を最大化していこうという姿勢なのです。
セグメントオブマーケティングはテクノロジーの進歩により実現可能
こうした概念は以前からあったものの収集できるデータが限定的であったため、実践が難しいといわれていました。顧客一人ひとりを分析して、個別のアプローチを行うというのは非常に骨の折れる作業です。
しかし昨今のテクノロジーの進歩は著しく、扱えるデータ量が爆発的に増えたと同時に、マーケティングオートメーションやDMPなど様々なツールが誕生しています。これらをうまく活用することで、自動でビッグデータを分析したり、顧客ごとに最適な接客を行ったりすることが可能になっています。テクノロジーの進歩がセグメントオブワンマーケティングの実践ハードルを下げ、マーケティングの可能性を大きく広げています。
セグメントオブワンマーケティングを実践する方法
セグメントオブワンマーケティングにはさまざまな手法がありますが、その事例を紹介します。これらを参考にしながら自社のビジネスに適した方法でセグメントオブワンマーケティングを実現しましょう。
レコメンデーション
通販サイトのAmazonや動画サービスのNetflixなどで積極的に行われています。みなさんも「この商品を買った人はこんな商品も買っています」というおすすめ機能をよく見かけるのではないでしょうか。精度の高いレコメンデーションは顧客の定着率を高め、解約率を低下させることができます。レコメンデーションは次の4種に分類されます。
ルールベース
最も単純なレコメンデーション。Aを見た人にはBをすすめる、などあらかじめ定めたルールに沿って行います。
コンテンツベース
あらかじめ計算されたコンテンツ間の類似性をもとに関連するコンテンツをすすめます。
協調フィルタリング
その顧客に似た行動パターンや嗜好を持つ他の顧客が購入・閲覧しているコンテンツをすすめます。
ベイジアンネットワーク
顧客の属性や行動データなど様々な情報をもとに因果関係を計算し、顧客が購入しそうなコンテンツをすすめます。
マーケティングオートメーション
OMOが進む中ではチャネルを分けて考えるのではなく、あらゆるチャネルを通じて顧客体験の最大化を目指さなければなりません。マーケティングオートメーションツールを活用すると様々なチャネルにまたがる顧客データをデータベース化できます。さらに自動でデータを分析して、位置情報に基づいて再来店を促すメッセージを配信したり、店舗での購入後にEメールでアフターサービスを案内したりするなど、顧客ごとに最適なタイミングで最適なアプローチを行うこともできます。
マーケティング5.0の時代においては、セグメントの細分化から個人という単位までセグメントの解像度が上がっています。またそれを実現するためにはテクノロジーを駆使していく必要があり、戦略・戦術の実行には上流工程からの設計がますます重要となっています。