現代、だれもが常にネットに接続できる時代になったことで、顧客の価値観やニーズ、そしてチャネルに多様性が生まれ、企業は顧客と手軽にコミュニケーションをとることができるようになりました。こうした世界で顧客の心をつかむためには、顧客個人を理解してアプローチをパーソナライズし、高品質なカスタマーエクスペリエンスを提供することが重要であるとこれまで説明してきました。
マーケティングがこのように従来のマスメディア偏重から、顧客個人との人間的なコミュニケーションを重視するものへシフトしたように、デジタル化はあらゆるビジネス活動を大きく変えており、既存ビジネスの再構築や収益モデルの見直しなどが急速に進んでいます。今回は、中長期的なビジネスを考えるうえで昨今重視されるテーマのひとつ、Everything-As-A-Serviceについて理解を深めていきたいと思います。
Contents
Everything-As-A-Service(XaaS)とは
大規模なシステム構築を必要とせずに、手元のデバイスで様々なコンピュータ資源を活用できる
Everything-As-A-Service はインターネットを通じてコンピューター資源を提供すること、またはそうしたクラウドサービスの総称です。XaaSと表記されることが多く、ザースと読みます。この「X」は未知の値の意味で用いられているため、XaaSのXには複数のアルファベットが該当します。「aaS」はas a Serviceの略で、何かをサービスとして提供すること、すなわち売り切りではないサブスクリプション型のビジネスモデルを表します。Everything-As-A-Service すなわちXaaSはこのふたつの意味を組み合わせたもので、ソフトウェアコンポーネントなどコンピュータ処理に必要なものをインターネットを通じたサービスの形で提供する概念です。
XaaSに似た言葉にはSaaS、PaaSやIaaSなどがあり、それぞれSoftware as a Service、Platform as a Service 、Infrastructure as a Serviceの略語です。たとえばSaaS はソフトウエアをユーザーに貸し出すことであり、ユーザーは対価を払って一時的に利用します。Office 365やG Suiteなどがこれにあたります。PaaSはIaaSが提供するインフラに加えてデータベースや開発環境などのミドルウェアも一体とするサービスで、最近では機械学習なども提供されています。XaaSはこれら「~asS」の総称であり、クラウドサービス全般とイメージすると理解しやすいでしょう。
Everything-As-A-Serviceを取り入れるメリットとは
コストを抑えつつ、柔軟なビジネス環境を迅速に構築できる
Everything-As-A-Serviceはサーバ利用、データ管理、給与・財務会計をはじめ様々な用途で用いられます。本来システム構築などは非常にコストがかかるものです。しかしEverything-As-A-Serviceを活用すれば手元のデバイスで必要な資源を必要な分だけ利用したり、さまざまなサービスを併用したりすることができます。コストを抑えつつ自社にとって望ましい環境を素早く整えることが可能になるため、多くの企業がEverything-As-A-Serviceに注目するようになっています。
変化の激しいビジネス環境で顧客に選ばれ続けるためには、多額のコストをかけて大規模な開発などを行うことは必ずしも最善ではありません。Everything-As-A-Serviceを活用すれば変化し続ける顧客ニーズや世の中のトレンドを迅速に取り入れられるため、柔軟なビジネスの実現につながります。
以前から大企業ではAmazon Web Services、Microsoft Azureなどを利用したシステム開発が標準になりつつありましたが、コロナ禍であらゆる業界・業種で業務のオンライン化が急務となったことでEverything-As-A-Serviceの利用が急増しており、今後も市場規模の拡大が続くと予想されています。
Everything-As-A-Serviceの活用における注意点とは
セキュリティ対策がしっかりとられているか確認する
Everything-As-A-Serviceを活用する際はセキュリティ対策を重視しなければなりません。たとえ提供元が信頼できる場合でも、サイバー攻撃の標的になった場合など情報漏洩の可能性があることは理解しておく必要があります。特に個人情報を用いる場合はデータを悪用されないために提供元の信頼性やプライバシーポリシーなどをしっかり確認しましょう。
サービスが終了する可能性を考慮に入れる
Everything-As-A-Serviceは成長段階の分野であるため競争が激しく、提供元の事情によりサービスが終了してしまうケースも考えられます。重要な部分を依存しすぎないようにしたり、いくつかのサービスを併用したりしてリスクを分散することも必要です。万が一サービスが終了しても業務に重大な支障が発生しないよう、日頃からデータを手元にバックアップしておくなどの対策も必要です。
Everything-As-A-Serviceはブラウザやアプリで簡単に利用できたり、複数のデバイスやチーム間で資料やデータの共有利用ができたりするため、コスト削減や業務効率化に貢献することが期待されています。上述した注意点を考慮しながら自社に適したEverything-As-A-Serviceを上手に活用して、柔軟でアジャイルなビジネスを目指しましょう。