トランスコスモス(以下当社)の“5ALoyalty診断”サービスの誕生の契機にもなった『マーケティング4.0』の発売から5年。シリーズ最新著『マーケティング5.0』が2022年4月20日に日本語版が発売されました。神様コトラーの緊急提言と題されたマーケティング5.0では、デジタル社会における世代間や社会の課題とマーケティング・テクノロジー活用の新戦術について語られます。記事では章ごとに概要をまとめて分かりやすくお伝えします。
第二回は「世代間ギャップ」です。
さまざまな世代に対応するという課題
自社の社員を構成しているのはどんな世代でしょうか。また、自社の商品は現在、どんな世代に対応しているでしょうか。
『マーケティング5.0』ではアメリカにおいて範囲づけられる5つの世代について語られています。すなわちベビーブーム世代、X世代、Y世代、Z世代、それにアルファ世代です。日本において同じ呼ばれ方をするベビーブーム世代とは生まれた年代が異なりますが、グローバルに読まれている著作ということで大胆な年代区切りをしているともいえるでしょう。一方で、今日のマーケターの注目を集めているZ世代は、世界的に共通する区分であるといってよいかもしれません。
『マーケティング5.0』では世代間の意識のずれについて、さまざまな例を示しながら、どの世代も異なる社会文化的環境と生活経験によって形作られていると述べています。同時に製品・サービスに対する選好や態度もまた、世代によってそれぞれ違っており、マーケターは異なるオファリングや顧客体験(CX)、さらには異なるビジネスモデルで対応するように迫られているのです。世代による細分化は、市場をセグメント分けするもっとも一般的な方法のひとつですが、まずは5つの世代についてそれぞれみていきましょう。
5つの世代
①ベビーブーム世代
この世代の人々は、1946年から1964年に生まれました。ベビーブームという言葉は、第二次世界大戦終結後のアメリカおよびほかの多くの国々における高い出生率をあらわしたものです。戦後の安全と好景気の中で、多くの夫婦が子どもを持ちたいと考え、当時のマーケターにとって主なターゲット市場になりました。後期には経済的に厳しい環境におかれた世代ではありますが、その規模と当時のアメリカの好景気によって、大きな経済的勢力の一つになっています。今日では彼らは高齢化しつつあり、より健康長寿になっているでしょう。
②X世代
X世代は1965年から1980年の間に生まれた人々です。人口の多いベビーブーム世代とY世代に挟まれたこの世代は、マーケターのレーダーに映らず「忘れられた真ん中っ子」と呼ばれてきました。真ん中っ子集団であるX世代は、消費者向け技術の大きな変化を経験しており、そのため適応能力が高いとされています。青年時代にMTVで音楽ビデオを観て、ウォークマンでテープを聴いたりしながら成長し、大人になってからはCDやストリーミングを利用することになったのです。彼らは今日、企業でほとんどのリーダー的役割を占めており、労働力人口のなかで最も影響力のある世代の一つになっています。
③Y世代
1981年から1996年の間に生まれたY世代は、過去二十年でもっとも議論の対象になってきた世代です。新しい千年紀に成人になった彼らは「ミレニアル世代」として広く知られています。彼らはソーシャルメディアの利用と強く関連している初めての世代であり、若いときからインターネットに慣れ親しんでいました。ソーシャルメディア上では自分を表現し、仲間と共有し、また仲間と比較し承認を得る欲求を感じています。そのため仲間の言うことや買うものに大きく影響されるのです。彼らはスマートフォンを使って度々オンラインで調べものや購入を行いますが、かといって上の世代ほど多くの製品を買うわけではなく、所有より体験を好むことが指摘されています。
④Z世代
世界のマーケターが関心を向けているのが、1997年から2009年の間に生まれたZ世代です。インターネットがすでに主流になっていた時代に生まれたため、彼らは史上初のデジタル・ネイティブとみなされています。Y世代と同じくソーシャルメディアを多用しますが、理想主義者のY世代と異なり、X世代は現実主義者であるといわれます。つまりフィルターを駆使して実際より洗練された自分の画像を投稿したがるY世代とは対照的に、Z世代はありのままの自分を描き出すことを好むのです。今日ではZ世代はすでにY世代を追い越して、世界全体でもっとも人口の多い世代になっています。2025年には、Z世代のほとんどが労働力人口を構成することになり、したがって、ほとんどの製品・サービスのもっとも重要な市場になるでしょう。
⑤アルファ世代
アルファ世代は2010年から2025年の間に生まれた人々で構成される一番新しい世代です。Y世代に育てられ、Z世代に影響を受けているので、アルファ世代は幼少期からmobile機器でコンテンツを積極的に消費してきました。彼らはハイテク玩具やスマート機器、ウェアラブル端末でくつろぎ遊んでいます。今日、アルファ世代はまだ巨大な購買力を持っていませんが、その親の支出に対して強い影響力を有しているといえるでしょう。
世代間ギャップとマーケティングの進化
マーケティングは変化し続ける市場に適応するために、絶え間なく進化しています。
マーケティング1.0-製品中心
1950年代にアメリカで始まった製品中心のマーケティング。主に裕福なベビーブーム世代とその親たちに対応するために開発されました。
マーケティング2.0-顧客中心
後期ベビーブーム世代とX世代の節約姿勢がマーケターにとって課題になり、消費者の購買力を大きく低下させた1980年代初めに広がりました。
マーケティング3.0-人間中心
Y世代は企業に、プラスの社会的・環境的影響をもたらす製品やサービス、文化を生み出すよう要求しました。
マーケティング4.0-従来型からデジタルへ
Y世代とZ世代はデジタル化した社会に適応しており、購入までにたどる道筋が変化するとともに、購入後の推奨がもっとも重要な指標となりました。
マーケティング5.0-人間のためのテクノロジー
Z世代とアルファ世代の登場によって、『マーケティング5.0』として今一度進化する時がきています。Z世代とアルファ世代に対応するためには、マーケターは人間の生活を高めるためにネクスト・テクノロジーを導入し続ける必要があります。マーケティング5.0は、マーケティング3.0(人間中心)とマーケティング4.0(テクノロジーというイネーブラー)を統合したものになるのです。
まとめ
自社は現在、そして未来のためにどの世代をターゲットとして進んでいるでしょうか。それぞれの世代特有のニーズを理解し、そのすべてに対応する体制を整えることできている企業は多くありません。これからの十年には、Z世代とアルファ世代の信頼を得られる企業が強い競争力をもって勝ち抜くことができます。そのために、それぞれの世代のギャップや選好を十分理解し、自社のブランドや商品が彼らの要望に応えられているかどうかを検討する必要があります。
※本記事は『コトラーのマーケティング5.0』より弊社にて編集・引用して解説しています
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第1回 マーケティング5.0へようこそ
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第2回 世代間ギャップ
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第3回 富の二極化
『マーケティング5.0』日本語版まとめ第4回 デジタル・ディバイド
『マーケティング5.0』まとめ第5回 デジタル化への準備度が高い組織