メタバースとは

マーケティング用語

昨今、話題となっているメタバース。「超越」を意味するメタ、そして「ユニバース(宇宙)」のバースを融合した造語です。VRデバイスを使用して入ることができるインターネット上の仮想空間のようなものというイメージを持っている方が多いかと思いますが、果たして本当にそれだけがメタバースなのでしょうか。今回の記事ではメタバースについてご説明します。

メタバースとは

実は、メタバースはまだきちんとした定義はされていません。バーチャル美少女ねむ氏執筆の『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』(技術評論社、2022)によると、

“「空間性」「自己同一性」「大規模同時接続性」「創造性」「経済性」「アクセス性」「没入性」の七要件を満たしたオンラインの仮想空間”
『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』(技術評論社、2022)

とされています。これもメタバースの唯一の定義ではなく、定義として提唱されているものの一つに過ぎません。メタバースは社会・経済において成長の最中にあり、その定義は流動的なものであるということを念頭に置いておく必要があります。

メタバースと呼ばれているプラットフォームの多様性

このように大きく定義が揺らいでいるメタバースはいったいどのようなものなのでしょうか。メタバースにあたると言われているプラットフォームの一部をご紹介します。

・Second Life
・VRChat
・cluster
・Horizon Worlds
・Decentraland
・The Sandbox
・NTT XR SpaceWEB(DOOR)

・あつまれ どうぶつの森
・Fortnite

これらのプラットフォームをはじめ、様々なメタバースプラットフォームが存在しています。
聞き馴染みのあるゲームの名前が列挙されていて驚かれた方もいるかもしれませんが、現在では、一般的に「不特定多数の人々がコミュニケーションを取れる仮想現実」全般をメタバースと呼称することが多いため、「あつまれ どうぶつの森」のようなゲームもメタバースとして扱うべきであるという提言も存在します。また、メタバースと聞くとここ数年で出てきた概念のように思われがちですが、プラットフォームの一つとして例に挙げた「Second Life」は2003年にサービスを開始しており、当時はメタバースとは呼ばれていなかったものの約20年前からプラットフォーム自体は存在していたことになります。

メタバースがなぜ注目されるのか

テクノロジーの進化により、VR空間へ入り込んで何かを行うということが比較的容易になってきたことは要因の一つではありますが、大きな転機となったのは旧Facebook社のMetaへの社名変更が挙げられるでしょう。Meta社は業績悪化予測を受け、メタバース実現に向け、開発に1兆円規模の投資を発表。自社のVRデバイスであるOculusシリーズもMetaブランドと統合されることとなりました。この出来事を筆頭に数々の企業がメタバース開発へ多額の予算を割り当てていく流れが発生したのです。日本でも、グリー株式会社は子会社のREALITY株式会社を中心として、今後数年をかけて100億円規模の投資を行うことを明らかにしています。それ以外にも、コロナ禍による現実世界でのコミュニケーション機会の損失補填となるツールとして、また、Web3.0の受け皿になり得る技術として注目を集めているのが現状です。

メタバースとWeb3.0

Web3.0で筆頭に上がる技術と言えばブロックチェーンでしょう。昨今話題となっている仮想通貨やNFTにもこの技術が使われています。メタバース上でNFTや仮想通貨を利用して経済圏を作るという発想から、一部ではメタバースにはWeb3.0はなくてはならないものであるという認識がされていますが、必ずしもそうではありません。実際に、VRChatといったプラットフォームでブロックチェーン技術を利用することは規約上禁止されています。一方で、DecentralandやThe Sandboxでは仮想通貨を使用し、商業活動が可能となっています。プラットフォームによって、Web3.0によるマーケットに対する姿勢が異なっているということはしっかり認識するべきでしょう。一部では、メタバースの定義にWeb3.0を必須要件とする考え方に批判が起きていることも事実であり、メタバースとWeb3.0の関係性について理解する際には注意すべき点です。

メタバースの活用例

①Vket
株式会社HIKKYが主催するメタバース最大のイベントです。ギネス記録にも認定されており、世界中から100万人以上が来場しています。VRデバイスだけでなく、スマホ/Webブラウザをはじめとする様々なデバイスから入場可能となっており、参加へのハードルが低いのも特徴の一つでしょう。70社以上の企業が協賛し、企業ブースを出展するなどし、企業ブランディングや商品認知に利用されるだけでなく、3Dアイテムの物販なども行われています。

②バーチャル渋谷
auと渋谷区が提携して実現したバーチャル渋谷とは、cluster上に渋谷の街並みを再現し、バーチャル空間上にもうひとつの渋谷を構築することにより、新たな文化を発信するという試みです。こちらの空間もスマホから入ることが可能であり、アプリ一つでメタバースの仮想都市へ出かけられる気軽さは魅力的です。この構想に対して、参画企業は2021年12月時点で73社にのぼり、ハロウィーンフェスではきゃりーぱみゅぱみゅ氏のバーチャルライブが行われるなどし、イベント全体で約40万人が参加しました。

③BOOTHのVRChat提携
ピクシブ株式会社が運営するマーケットプレイス「BOOTH」ではVRChatと提携し、VRChat内で使用できるアイテムにアイコンを表示するなどして、3Dアバターや衣類、小物等の販売促進を行っています。

④仮想不動産投資
メタバースプラットフォームDecentralandではMANAという仮想通貨を利用した商業活動が行われており、その中でも、メタバースの不動産投資が非常に話題となりました。売買は仮想通貨を使って行われ、所有権はNFTによって保証されます。前章で述べたWeb3.0の活用がなされている事例となります。

メタバースの今後

このように現在、メタバースには様々な形があり、プラットフォームによってできることは様々です。現状では、メタバースという言葉を定義することは非常に難しいと言えるでしょう。

今後、この分野が成熟することによってメタバースの定義が明確となるまでに、様々なプラットフォームやサービスが生まれては消えていくと思われます。技術の進歩とともにマーケティング、ビジネスモデルが成長しつつある分野であり、現時点での正解は存在しません。また、日本においてはメタバースに関する法整備が追いついているとは言い難い状況にあり、リスクを孕んでいることも否定できません。一方で、多くの企業がメタバースの研究開発に投資をし、日々、メタバースに関する新しい仕組みが開発されています。このことからも、今後の成長が期待できる分野であり、様々な観点から注視していくべき技術であることに間違いはないでしょう。

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