マズローの欲求とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した人間の欲求を5段階の階層で理論化した法則です。今回の記事ではそれぞれの階層で示された欲求を満たすことが、どのようにマーケティングに応用されていくのかを考えていきましょう。
マズローの欲求5段階説とは
マズローの欲求5段階説では、人間の基本的欲求は5段階のピラミッドで構成されていて、低い階層の欲求が満たされると、1階層上の欲求を満たそうとするという心理学理論です。欲求の5段階は下層から「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」で構成されます。
- 自己実現欲求 ありのままの自分を受け入れる、自分にしかできないことを成し遂げたい
- 承認欲求 他社から価値ある存在として認められたい、自己を尊重したい
- 社会的欲求 他者と関わりたい、社会から必要とされたい
- 安全欲求 身体的・経済的に安全に暮らしたい
- 生理的欲求 生きるための必要最低限の欲求
現代の日本においては、社会的欲求や承認欲求を満たしたいと思っている方が多い状態でしょう。なぜなら日本は先進国であり、生命の維持や身の安全は確保された社会となっているからです。
マーケティングの観点は、社会的欲求や承認欲求を満たすサービスにはビジネスチャンスが多くあるといえます。近年ではSNSの利用が増えていますが、これは社会的欲求、承認欲求を満たすものの代表例としてあげられるでしょう。
マズローの欲求5段階説をマーケティングに応用するには
欲求を性質的に分類すると以下のように、物質的欲求 / 精神的欲求、外的欲求 / 内的欲求、欠乏欲求 / 成長欲求といったように分類できます。
- 物質的欲求、精神的欲求
- 外的欲求、内的欲求
- 欠乏欲求、成長欲求
物質的欲求を満たす商品としては、テレビ、洗濯機、掃除機などがありますが、これはモノを所有することで欲求を満たすものです。一方、精神的欲求を満たす商品・サービスには、自己啓発セミナーやカウンセリング、SNSなどがあげられるでしょう。これらは人とつながったり、承認欲求を満たす要素が入っています。
外的欲求を満たす商品は、持ち物、生活環境などがそれにあたります。これらは人の外面を満たすモノです。内的欲求は、自信をもたらすもの、社会貢献できるものなど人の内面を満たすモノが分類されます。
人間が求めるほとんどの商品・サービスが分類されるのは、欠乏欲求です。一方で成長欲求に分類される欲求は自己実現欲求のみであり、この欲求を満たすためには人間が自身の可能性を発揮し自己実現を達成する必要があります。最も高次な成長欲求を満たす商品・サービスを作ることができれば、高度化した社会においては大きなビジネスチャンスとなります。
人間は一般的に、満たされるとより上位の欲求を求めることになります。先進国はもとよりSNSが発展した現在のスマホで世界がつながった状況においては、モノで欲求が満たす時代は終わり、より精神的欲求の充足が求められています。マズローは心理学者でしたが、人間の欲求を段階に分解したこの理論は、マーケティング視点でも示唆を与えてくれるものです。人間のインサイトを見きわめ、どのような商品・サービスが求められているのかを考えるうえで非常に重要な視点となるでしょう。
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